親権者の変更とは

 親が離婚し、子が未成年の場合、父親と母親のどちらかが親権者になります。

 近年では、共同親権制度の創設といった議論がありますが、今の日本の法律では、共同親権は認められていません。

 ところで、日本では、母親の方が親権者になることが圧倒的に多いと言われますが、もし母親が親権者として不適切な対応をしていた場合、どうなるでしょうか。

 たとえば、母親が子に暴力をふるっていたり、ネグレクトをしていたりすると、子の福祉という観点からは、放置することが適切ではない場合もあるでしょう。

 未成年の子が中学生や高校生であれば、自分から父親のもとに逃げるということもできるでしょうが、未成年の子が乳児や幼稚園児だった場合、一刻を争うということもあります。

 そのような場合でも、一度母親を親権者と決めた以上は、親権者を変えることはできないのでしょうか。

 実は、日本の法律では、親権者の変更という手続きが存在します。

 この制度を利用すれば、一度決まった親権者の変更をすることができます。

 法律上は、「子の利益のため必要があると認めるとき」に親権者の変更が可能とされています。

 だれがこの点を判断するかですが、父親や母親が話し合いで決めるといったことはできず、必ず裁判所での手続きを踏む必要があります。

 具体的には、家庭裁判所での調停や審判という手続きが必要です。

 もっとも、母親が子に暴力をふるっており、このままでは子の生命・身体に重大な危険が訪れることが明白な場合、調停や審判を行っている間に、取り返しがつかないことになるかもしれません。

 母親が子を虐待しているようなケースで、父親が親権者の変更を申し立てると、母親による虐待が悪化する可能性があります。

 そういったケースでは、保全処分という制度を利用することが考えられます。

 親権者の変更の保全処分とは、たとえば親権者の職務執行停止と、親権行使の職務代行者の選任が考えられます。

 まず、親権者の職務執行停止によって、親権者の親権を一時的に使えないようにします。

 その上で、職務代行者に選任された者は、一時的に親権者としての権利を行使できるようになるため、上記の例だと父親を親権行使の職務代行者にすることで、父親が親権を行使できるようにします。

 これにより、父親が子をいったん引き取ったうえで、親権者変更の調停や審判を進めることができます。

 ここまで、親権者の変更手続きについて、ご説明しましたが、このような正規の手続きを踏むことなく、子を想うばかりに、子を連れ去ってしまうということがニュースになったりします。

 しかし、親権者ではない者が、親権者のもとから子を連れ去る行為は、犯罪になってしまう可能性があります。

 親権でお悩みの方は、一度弁護士にご相談ください。

個人事業主の自己破産

 個人事業主の方は、サラリーマンやパートの方と異なり、事業用の借入がある方が多くいらっしゃいます。

 事業用の借入は、金額が大きいため、利息を支払うだけでも負担が大きく、事業が上手くいかなくなれば、返済は難しくなってきてしまいます。

 もし、返済が難しくなってしまった場合は、自己破産を検討しなければなりません。

 しかし、個人事業主の方が自己破産を検討する際は、サラリーマンやパートの方の自己破産とは、やや異なる観点が必要になってきます。

 まず、サラリーマンやパートの方が自己破産をしても、基本的にはお仕事に影響はありません(一部資格制限がつくものはあります)。

 しかし、個人事業主の方は、自己破産によって、事業を廃業しなければならないケースがあります。

 たとえば、特別な機械で、商品を生産している場合、自己破産をすればその機械は、原則として売却し、返済にあてなければなりません。

 つまり、事業をする上で必要な機械がなくなってしまうので、少なくとも同じ事業の継続は難しくなってしまいます。

 また、特別な機械を売却する必要はないケースであっても、事業の継続が困難なこともあります。

 たとえば、取引先に未払のお金が300万円ある場合、自己破産をすると、返済義務がなくなります。

 そうなれば、取引先は、300万円の債権を失うことになるため、仕事上での信頼を失い、今後は取引をしてくれなくなる可能性があります。

 その取引先からしか入手できない商品などがある場合は、事業の継続が困難になります。

 他方、他の取引先から商品を仕入れるといったことができるのであれば、事業の継続は可能な場合もあります。

 また、個人事業主の方が自己破産をする場合、注意が必要なのは、管財人の存在です。

 個人事業主の方は、事業用のお金と、生活費とがあまり分けて管理されていない場合が多いため、原則として管財人が選任され、管財人の監督下で手続きを進めることになります。

 そのため、管財人に支払うお金を用意しなければなりません。

 また、事業用に借りている物件がある場合、あらかじめ引渡しをしておかないと、管財人が代わりに引渡し業務を行うことになり、管財人に支払うお金が増えてしまいます。

 よって、可能な限り、裁判所に書類を提出する前に、事業用に借りている物件は、引渡しをしておく必要があります。

 このように、個人事業主の方が、自己破産を行う場合、サラリーマンの方やパートの方とは異なった観点から、手続きを進めていく必要があります。

 個人事業主の方で、自己破産を検討されている方は、まず弁護士にご相談ください。

会社が倒産する際の経営者保証ガイドライン

 多くの中小企業は、事業用資金を借入れ、そのお金を活用して、事業を行います。

 借り入れの返済が順調であれば、何の問題もないのですが、経営状態が悪化し、返済ができなくなってしまうという事態もあります。

 もし、従業員のお給料や、取引先への支払いも含め、会社のキャッシュが尽きてしまった場合は、会社は倒産せざるを得なくなります。

 また、中小企業が借り入れをする際は、多くのケースで社長が連帯保証人になっています。

 そのようなケースでは、社長も同時に自己破産をせざるを得ないケースが多いでしょう。

 しかし、会社の倒産=社長の自己破産というのは、社長にとって酷だという意見も多かったため、救済措置として、経営者保証ガイドラインというものが設けられています。

 経営者保証ガイドラインを利用すれば、社長が一定の財産を手元に残した上で、保証債務を失くすことができる場合があります。

 では、自己破産と、経営者保証ガイドラインには、どのような違いがあるのでしょうか。

 まず、手続きの対象になる債権者に違いがあります。

 自己破産では、全債権者が手続きの対象ですが、経営者保証ガイドラインでは、原則として保証債権者である金融機関が対象です。

 次に、経営者ガイドラインを使うためには、主債務者が中小企業であること、主債務者と保証人が弁済に誠実であることといった条件がつきます。

 また、大きな違いとして、自己破産は債権者の同意なく利用できる制度ですが、経営者保証ガイドラインは、債権者の同意がなければ、保証債務の免除はされません。

 さらに、自己破産をすると、債務者はいわゆるブラックリストに登録されますが、経営者保証ガイドラインを利用すれば、ブラックリストに登録されません。

 このように、自己破産と経営者保証ガイドラインでは、手続きの方法や利用条件が異なりますが、どのようなケースで、どちらを選択するのかは、様々な事情を考慮して、決める必要があります。

 たとえば、社長が保証債務以外にも、個人で多額の借入をしている場合、その借入は経営者保証ガイドラインの対象外の債務であるため、経営者保証ガイドラインを利用しても、社長は個人の借入を返済しなければなりません。

 そのため、社長個人が多額の借入があり、その返済が難しい場合は、自己破産を選択すべきでしょう。

 また、保証債務の債権者が、保証債務の免除に応じない姿勢を示している場合も、自己破産を視野に入れる必要があります。

 他にも、色々な要素を考慮した上で、どのような手続きを取るべきかを検討する必要がありますので、経営者保証ガイドラインの利用を検討している方は、弁護士にご相談ください。

自己破産と資格制限

 お仕事の中には、一定の資格が必要なものがあります。

 たとえば、弁護士のお仕事は、弁護士の資格がなければできず、もし資格がない状態で弁護士の業務を行えば、罰せられる可能性があります。

 自己破産をした場合、突然お仕事がクビになるようなことはありませんが、一定の資格は、その使用を制限されてしまうことがあり、その結果、一定期間はお仕事ができなくなってしまうことがあります。

 たとえば、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、不動産鑑定士などの士業系の資格は、自己破産によって、資格の制限を受けます。

 また、警備員、生命保険募集人、損害保険代理店、宅地建物取引業者、建設業、貸銀賞なども、自己破産による資格制限があります。

 また、後見人のように、誰かの財産を管理する立場にある場合も、その資格が制限されます。

 そのため、たとえば警備員のお仕事をしている方が自己破産をする場合、警備員のお仕事を続けることが難しくなる場合があるため、場合によっては、自己破産以外の債務整理の方法を検討する場面もあります。

 しかし、ずっと警備員のお仕事ができなくなるわけではなく、自己破産の手続きが始まってから、債務の返済義務が免除される「免責決定」が出るまでの間のみ、資格が制限されるにとどまります。

 資格の制限を受けている間は、警備業務以外の業務に配置換えをしてもらったり、休職するなどといった対応が考えられますので、お勤め先の会社に相談することも検討が必要です。

 また、会社の取締役をしている方が自己破産をする場合、取締役の地位を失うことになっています。

 しかし、再度会社の取締役に就任することは制限されていないため、いったん取締役の地位を失ってから、株主総会で再度取締役に就任することも可能です。

 最後に、資格の制限ではありませんが、自己破産をすると、信用情報機関にその旨が登録されます。

 信用情報機関とは、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、日本信用情報機構(JICC)、シー・アイ・シー(CIC)の3つがあり、自己破産をした場合、これらの機関に情報が登録され、その結果、新たに借り入れをしたり、クレジットカードを作成したりといったことが難しくなります。

 とはいえ、いつまでも新たな借り入れや、クレジットカードの作成ができないわけではなく、免責決定を受けてから5年から10年程経過すれば、信用情報機関のデータは消えることが多いです。

 信用情報機関のデータが消えれば、新たな借り入れや、クレジットカードの作成が可能になります。

個人再生の流れ

 個人再生の手続きの流れは、裁判所によって大きく運用が異なります。

 私は大阪の弁護士なので、大阪の裁判所の運用について、簡単にご説明したいと思います。

 まず、個人再生のスタートは、地方裁判所に、個人再生の申立書類を提出することから始まります。

 ただし、いきなり個人再生の申立書のみを、裁判所に提出するのではなく、「個人再生をするための要件を満たしていること」が分かる資料も添付しなければなりません。

 たとえば、債務がどれくらいあるのか、預貯金などの資産がどれくらいあるのかといった資料が必要になります。

 個人再生の申立書類を裁判所に提出した後、おおよそ2週間程度で、個人再生の手続きが始まるかどうかが決まります(もし、個人再生の要件を満たしていないと判断されると、ここで手続きが終わってしまいます)。

 次に、個人再生を申し立てる際に、債権者の一覧表を添付しているので、裁判所は、その債権者に対し、債権の届出をするよう、促すことになります。

 債権者から、届出があった後、当該債権に対し異議が出なければ、個人再生の申立人は、「再生計画案」を提出しなければなりません。

 「再生計画案」とは、今後、誰に、どれだけの返済を行っていくかの計画表を指します。

 「再生計画案」は、自由に決めていいわけではなく、一定のルールがあります。

 たとえば、最低弁済額という、『最低でも、これだけは返済しなければならない』という基準が設けられているため、そういった条件をクリアした「再生計画案」を作成する必要があります。

 債権者は、「再生計画案」を見て、個人再生に賛成するか、反対するかを決めることになるため、慎重に計画を立てる必要があります。

 たとえば、収入状況から見て、およそ返済が困難だと思われてしまうような「再生計画案」を出すと、債権者が個人再生に反対する可能性があります。

 もし、法律で定められた数の同意が得られなければ、個人再生は認められなくなってしまいます。

 そのため、個人再生の手続き中に、大きく収入が減ってしまったり、収入が減っていなくても、ギャンブルなどにお金をたくさん使ってしまうと、債権者の同意は難しくなってきます。

 仮に、問題無く手続きが進めば、裁判所が個人再生の認可決定をします。

 この認可決定を受けた後、個人再生を申し立てた人は、「再生計画」に従って、債権者に返済をしていくことになります。

 具体的には、3年から5年かけて、債務を返済していくことになります。

 

 

 

 

小規模個人再生と給与所得者等再生

 債務整理を検討したことがある方は、小規模個人再生と、給与所得者等再生という言葉を、聞いたことがあるかもしれません。

 小規模個人再生は、債務を減額した上で、分割払いをしていく制度ですが、給与所得者等再生は、その督促という位置づけになっています。

 小規模個人再生と、給与所得者等再生では、大きく分けて、3つの違いがあります。

 1つ目の違いは、給与所得者等再生では、収入状況について、特別な条件が付いている点です。

 法律上は、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる」ことが必要です(民事再生法239条1項)。

 2つ目の違いは、最低弁済額の計算方法です。

 小規模個人再生では、債権額によって、おおよそ100万円から500万円の返済が必要になるのに対し、給与所得者等再生では、生活保護基準に従って計算した可処分所得の2年分以上の返済が必要という条件がつきます。

 3つ目の違いは、小規模個人再生は、債権者の書面決議が必要ですが、給与所得者等再生では、書面決議が不要とされています。

 では、どのようなケースで、給与所得者等再生の向き・不向きが分かるでしょうか。

 まず、独身の方は、給与所得者等再生は、不向きなことが多いと言えます。

 その理由は、独身の方は、扶養家族がいないため、生活保護基準によれば、可処分所得が多くなり、最低弁済額が高めになってしまうためです。

 次に、過去2年間の間で、収入状況に大きな変動がない方は、給与者所得等再生に向いています。

 たとえば、公務員や会社員など、安定的に給与所得がある方は、給与者所得等再生を行いやすいと言えるでしょう。

 では、個人事業主のように、毎月の収入状況が安定しないこともある方は、給与者所得等再生はできないのかというと、そういうわけではありません。

 たとえば、個人事業主の方であっても、特定の建設業者から、安定的に下請けを受けることができている場合、給与者等所得再生が可能な場合があります。

 さらに、何らかの理由で、債権者が小規模個人再生に反対してくることが予想される場合は、積極的に給与者所得者等を検討すべきでしょう。

 なぜなら、給与所得者等再生では、書面決議が不要になるからです。

 以上のように、小規模個人再生を選択するか、給与所得者等再生を選択するかは、諸事情を総合的に検討した上で、判断しなければなりません。

 かなり専門的なノウハウが求められるため、債務整理を検討している方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。

 

個人再生で重要な「安定的な収入」

 個人再生をすると、借金の大幅な減額が可能になるため、借金の返済で困った場合は、個人再生を検討してみる価値があります。

 まず、個人再生は、借金を減額した上で、残った借金を分割払いしていく制度なので、安定的な収入がある場合に、適した制度と言えます。

 もし、収入の見込みがないような場合は、自己破産の検討をすることになります。

 次に、「マイホームは残したい」というような場合は、個人再生が適しています。

 自己破産をすることになれば、基本的にマイホームを売却し、借金の返済にあてなければなりませんが、個人再生を使えば、住宅ローンが残っていても、マイホームを残すことが可能です。

 ただし、マイホームを残したい場合、住宅ローンは、個人再生後も全額返済が必要になります。

 そういった観点からも、個人再生をする上では、やはり安定的な収入というのは、必須になります。

 では、どういったケースなら「安定的な収入がある」とみなされるのでしょうか。

 まず、会社員や公務員など、毎月、安定的にお給料がもらえるようなケースだと、「安定的な収入がある」ということになるでしょう。

 では、個人事業主の方は、どうでしょうか。

 個人事業主の方は、その時々の状況によって、収入にばらつきが出てしまうので、「安定的」という言葉からは、やや遠いようにも思えます。

 しかし、ここでいう「安定的」とは、「借金の返済を継続できるか」という意味あいが強いため、仮に収入にばらつきがあっても、借金の返済に十分な収入を確保できる状態であれば、「安定的な収入がある」となりやすいでしょう。

 次に、アルバイトやパートタイマーなどはどうでしょうか。

 アルバイトやパートタイマーの場合、会社員や公務員と比較すると、「ずっとその仕事を継続する可能性」や、「シフトにたくさん入ったかどうかで収入が変わる可能性」などが考慮されます。

 たとえば、長年、同じ職場で働いていて、毎月の収入にそれほど差がないようなケースであれば、「安定的な収入がある状態」と評価できるでしょう。

 他方、頻繁に職場を変えていたり、生活ギリギリの収入しか得られない状態だと、借金の返済が継続できないという評価がなされる可能性が高まります。

 このように、個人再生をする上で重要な「安定的な収入」は、個人再生をする方の職種、勤務実績、就労意欲、年齢など、諸般の事情を考慮した上で、判断されます。

 どういったケースで、「安定的な収入」があると言えるのかは、一度弁護士に相談するとよいでしょう。

相続分の譲渡と相続分の放棄

 たとえば、お父さんが亡くなり、相続人として、お母さん、長男、次男がいたとします。

 それぞれの法定相続分は、お母さんが2分の1、長男と二男は4分の1ずつです。

 このケースで、長男が「自分の相続分を、お父さんと仲が良かった友達のAさんにあげたい」と思った場合、相続分の譲渡という方法で、その希望を実現することができます。

 相続分の譲渡とは、簡単に言うと、相続人としての権利を譲り渡すことを指します。

 そのため、今回の例だと、Aさんは、相続人ではありませんが、長男から相続分を譲り受けたので、相続人と同じように、遺産分割協議に参加することができるようになります。

 では、この相続分の譲渡は、どのような方法で行えばいいのでしょうか。

 実は、相続分の譲渡の方法は、法律で定められていません。

 相続分を譲渡したい人と、譲り受けたい人が、その合意をすれば、相続分の譲渡が可能です。

 合意の方法は、書面でもいいですし、口頭でも有効ですが、その後の色々な相続手続のことを考えると、書面化し、実印と印鑑登録証明書の添付が必須と言えるでしょう。

 また、相続分の譲渡は、他の相続人の同意なく可能です。

 先ほどの例だと、長男はお母さんや次男の意向とは関係なく、Aさんに相続分の譲渡ができます。

 また、相続分の譲渡は、有償・無償を問いません。

 たとえば、長男がAさんに、1000万円で相続分を譲渡してもいいし、反対にタダで相続分を譲渡してもいいとされています(ただし、贈与税の問題は考慮が必要です)。

 他方、似たような言葉として、相続分の放棄というものがあります。

 先ほどの例で言うと、長男が、遺産を受け継ぎたくないと思い、お母さんや次男に「相続分の放棄をする」と宣言するようなケースです。

 この相続分の放棄は、相続放棄とは意味が違う点に注意が必要です。

 相続分の放棄は、相続人としての地位を維持したまま、自分が持つ相続の権利を放棄することなのでで、借金などのマイナスの財産は、そのまま受け継ぐことになります。

 他方、相続放棄は、相続人としての地位を失うための手続なので、プラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も受け継がないという制度です。

 また、相続分の放棄は、あまりメジャーな制度ではないため、相続分の放棄をしても、不動産や預貯金の名義変更ができない場合もあるため、手続選択は慎重に行う必要があります。

 相続分の譲渡、相続分の放棄、相続放棄など、相続に関する手続きは、似たような言葉であっても、全く意味合いが異なるものがありますので、相続の手続きをする際は弁護士にご相談ください。

 

法定相続分と指定相続分

 人が亡くなると、遺産は誰のものになるのでしょうか。

 遺言書などがない場合、遺産はいったん、相続人の共有物になると考えられています。

 たとえば、お母さんが亡くなり、相続人としてお父さん、長女、二女がいる場合、お母さんの遺産は、長女と二女が一時的に共有している状態になります。

 このとき、「相続人3名は、どのような割合で、遺産を所有していると言えるか」が問題になりますが、このような持分割合は相続分と呼ばれています。

 法定相続分とは、法律で定められた相続分の事で、先程の例だとお父さんが2分の1、長女と二女がそれぞれ4分の1ずつの権利を持つことになります。

 他方、民法では、指定相続分と呼ばれる概念もあります。

 たとえば、お母さんが、遺言書を作成し、「お父さん、長女、二女の相続分は3分の1ずつにする」旨の記載をしておくと、法定相続分とは異なった持分割合を実現できます。

 また、この相続分の指定は、第三者に委ねることもできるとされています。

 たとえば、先程の例で「お父さん、長女、次女の相続分をどうするのかの判断は、大阪太郎弁護士に委ねます」という遺言書を作成した場合、大阪太郎弁護士が、相続分の割合を決める権限を持ちます。

 では、仮に「お父さん、長女、次女の相続分をどうするのかの判断は、お父さんに委ねます」という内容の遺言書の場合は、どうなるでしょうか。

 この内容だと、お父さんが、ついつい自分の取り分を多くしたいという誘惑にかられてしまう可能性があります。

 そのため、こういった内容だと、相続分の指定の委託は、無効になるという見解が有力です。

 他方で、遺言は、あくまでも遺言者の最終意思が尊重されるべきという観点から、こういった内容の相続分の指定も有効だという見解もあります。

 では、さらに珍しい事例として、一部だけ相続分を指定した場合は、どうでしょうか。

 たとえば、お母さんが「長女の相続分は5分の2とする」旨の遺言書を作成した場合、お父さんと二女の相続分は、どうなるでしょうか。

 この場合、「配偶者の相続分は、本来2分の1ある以上、その分は確保すべきだ」という立場の考えからすると、お父さんの相続分は2分の1で、二女の相続分は10分の1になります。

 他方、「法律の根拠なく、配偶者だけを強く保護する理由がない」という立場の考えからすると、お父さんの相続分は5分の2、二女の相続分は5分の1になります。

 このように、法定相続分と、指定相続分は色々な考え方があり、はっきりと法律に記載がないところもあるため、非常に複雑な領域です。

相続人の種類

 「相続人が誰か」ということを質問されたとき、最初に誰を思い浮かべるでしょうか。

 「配偶者だ」と答える方がいれば、「子どもだ」と答える方もいると思います。

 実は、法律的には、相続人は大きく2種類あると言われています。

 まず1つ目は、血族相続人と呼ばれているものです。

 血族、という言葉からイメージできるとおり、血がつながった家族が、相続人になるのが原則ということになります(もちろん、養子縁組をすれば、血のつながりはなくとも相続人になることができます。)。

 ただし、血がつながっていれば、誰でも相続人になれるわけではありません。

 相続人には、優先順位が定められており、最優先の相続権を持つのは、子どもです。

 たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんに長男と二男がいる場合、長男と二男は、最優先の権利を持つ相続人です(仮に二男が先に亡くなっていて、二男に子がいる場合、その子が相続権を持ちます)。

 では、Aさんに子どもがいなかった場合は、どうなるでしょうか。

 この場合、第2順位の相続権を持つ、Aさんの親が相続人になります(親がいない場合は、祖父母など、さらに上の世代が、相続権を持ちます)。

 さらに、Aさんの親もいないような場合は、第3順位の相続人である、Aさんの兄弟姉妹が相続権を持ちます(兄弟姉妹が亡くなっていて、その子がいる場合は、その子が相続権を持ちます。)。

 血族相続人は、この第3順位までの人だけが含まれており、それ以上遠縁の親族は、相続人ではありません。

 2つ目の相続人として、配偶者相続人があります。

 配偶者は、血族ではなく、養子縁組もしていませんが、最優先の相続権を持ちます。

 では、いわゆる事実婚関係の場合、相続権はどうなるでしょうか。

 たとえば、XさんとYさんが、何十年も夫婦同然の生活をしていたものの、婚姻届けは出していなかったという状態で、Xさんが亡くなった場合を考えてみます。

 現在の日本の法律では、事実婚関係では、相続権を認めていないため、Yさんは、相続権がありません。

 そのため、Yさんに財産を残しておきたいなら、Xさんは遺言書を作成しておく必要があります。

 もっとも、遺言書が必要なのは、こういった事実婚関係の場合だけではありません。

 たとえば、子どもがいない夫婦のうち、夫が亡くなると、相続人は、妻と、夫の親(または夫の兄弟姉妹・甥姪)ということになり、遺言書が無いと、妻は、夫側の親族と、遺産の分け方を協議しなければなりません。

 また、子どもがいる夫婦であっても、遺産の分け方をめぐって、もめてしまう例は数多くあります。

 そのため、遺言書が必要かどうか、一度弁護士に相談することが大切です。

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代襲相続人になるのは誰か

 基本的に、ご相続は「年齢順」に発生することが多いため、おじいさん、お父さん、子ども、孫という順番にご相続が発生することが多いでしょう。

 しかし、実際には、必ずしも年齢順になるとは限りません。

 病気や、事故などによって、若い世代の方が先に亡くなってしまうこともあり得ます。

 では、仮に若い世代の方が先に亡くなってしまった場合、相続権はどのように移っていくのでしょうか。

 たとえば、祖父Aさん、父Bさん、子Cさん、という家族で考えてみます。

 最初に父Bさんが亡くなった場合、第1順位の相続人である子Cさんが、父Bさんの相続権を持ちます。

 その次に、祖父Aさんが亡くなった場合は、どうなるでしょうか。

 本来なら、祖父Aさんにとって、第1順位の相続人である父Bさんが、すでに亡くなっているため、子Cさん(祖父Aさんにとっての孫)が、祖父Aさんの相続権を持つことになります。

 このように、本来相続人となるべき人が、相続開始前に亡くなってしまった場合などに、その下の世代が相続権を持つことを「代襲相続」といいます。

 ただ、代襲相続は、「本来相続人となるべき人が、相続開始前に亡くなってしまった場合」だけに限りません。

 「本来相続人となるべき人が、存命ではあるものの、何らかの理由で相続権を失った場合」も、代襲相続が発生します(ただし、相続放棄は除きます)。

 たとえば、先程の例で、父Bさんが存命中に、祖父Aさんを殺害してしまった場合、父Bは第1順位の相続人ではありますが、相続権を失います(これを相続欠格といいます)。

 この場合、子Cさん(祖父Aさんにとっての孫)が、祖父Aさんの相続権を持ちます。

 では、代襲相続が発生するためには、他にどのような条件が必要なのでしょうか。

 まず、相続権を失った人と、その人の代わりに相続する人が、親子である必要があります。

 先ほどの例だと、父Bさんと子Cさんは、親子なので、この条件を満たすことになります。

 なお、父Bさんが相続権を失った時、子Cさんが胎児だった場合であっても、子Cさんは祖父Aさんの相続人になることができます。

 次に、代わりに相続する人が、亡くなる人の直系の子孫である必要があります。

 たとえば、先程の例で、父Bさんが、祖父Aさんの養子だった場合を検討します。

 養子縁組は、養子縁組をした2人の間にだけ、効力が及ぶため、父Bさんが養子になった時に、すでに子Cさんが存在した場合、父Bさんが祖父Aさんと養子縁組をしても、子Cさんと祖父Aさんは無関係の他人ということになります。

 そのため、父Bさんが祖父Aさんの相続権を失っても、子Cさんは、祖父Aさんの相続権を持つことはありません。

 他方、父Bさんと祖父Aさんが養子縁組をした後に、子Cさんが生まれた場合は、子Cさんが代襲相続する権利を持ちます。

 このように、代襲相続の場面では、どんなときに、誰が相続権を持つのかは、非常に複雑です。

 代襲相続が起きる場合は、誰が相続権を持つのかについて、弁護士に相談することをお勧めします。

 

親と子が同時に亡くなった場合、遺産はどうなるか

 たとえば、おばあさん、お父さん、お母さん、長男という4人家族の場合の相続を考えてみましょう。

 仮に、お父さんが亡くなれば、相続人はお母さんと長男です(おばあさんは相続人ではありません)。

 お母さんと長男は、それぞれお父さんの遺産の2分の1を取得する権利を持ちます。

 では、仮にお父さんと長男が自動車に乗っていて、交通事故に遭った場合、どのような相続が起きるでしょうか。

 まず、お父さんが先に亡くなり、その数分後に長男が亡くなった場合を考えます。

 お父さんが亡くなったことで、お母さんと長男が、いったん相続人として遺産の権利を取得します。

 その数分後、長男が亡くなったことで、長男の相続人であるお母さんが、長男の遺産を全て取得することになります。

 他方、もし先に長男が亡くなって、その数分後にお父さんが亡くなった場合はどうなるでしょうか。

 この場合、長男の相続人であるお父さんとお母さんが、長男の遺産を半分ずつ相続することになります。

 その数分後、お父さんが亡くなると、お父さんにとっての相続人は、お母さんとおばあさんなので、お母さんがお父さんの遺産の3分の2を取得し、おばあさんはお父さんの遺産の3分の1を取得します。

 では、お父さんと長男が、同時に亡くなった場合はどうなるでしょうか。

 日本の法律では、「生きている人だけが、相続人になることができる」という決まりになっています。

 そのため、お父さんが亡くなった際、長男はすでに存在しない人という扱いになり、お父さんにとっての相続人はお母さんとおばあさんということになります。

 次に、お父さんと長男がかなり近い時間で亡くなったものの、どちらが先に亡くなったのかははっきりしない、という場合はどうでしょうか。

 このようなケースで、ご遺体の解剖などをして、どちらが先に亡くなったのかを1秒単位ではっきりさせる、などということは非現実的です。

 そこで、こいったケースでは、「同時に亡くなった」とみなすことになります。

 

 最後に、お父さんと長男が同時に亡くなり、長男には子がいた、というケースだとどうでしょうか。

 この場合は、長男については、長男の子が唯一の相続人なので、長男の子が長男の遺産を取得します。

 他方、お父さんにとっての相続人は、おかあさんと、孫である長男の子ということになります。

 このように、誰が誰の遺産を相続するかという点は、家族構成や、亡くなった順番などで大きく変わります。

 複雑な事情がある場合、どのように相続手続を進めるべきかは、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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法律上の「人の死亡」は、どの時点なのか

 人が死亡すると、法律上は相続が発生したことになります。

 相続が発生すると、法的には様々な現象が起きます。

 たとえば、お父さんが亡くなって、相続人が長男と二男という例を考えてみます。

 お父さんが亡くなると、お父さんは「財産を所有する権利」を失います。

 そのため、お父さんが生前に自宅の不動産を所有していたり、預貯金口座を持っていたとしても、お父さんが亡くなると同時に、お父さんのものではなくなります。

 その代わり、お父さんが所有していた財産の権利は、相続人の長男と二男に受け継がれることになります。

 では、ここで疑問になるのが、「いつ人は死んだことになるのか」という点です。

 もちろん、多くの場合は、生物学上の死をもって、死亡したということになりますし、弁護士もその前提で実務を行っています。

 しかし、「生物学上の死を確認できない限り、人は死亡しない」ということになると、困ったことが起きるケースがあります。

 たとえば、遭難などで行方不明になっている方です。

 行方不明になり、住民票も存在しないような場合だと、その人が生きているのかどうか判断がつきません。

 行方不明の方の生物学上の死を確認することは、非常に困難です。

 それにもかかわらず、行方不明の方がずっと生きているということにすると、仮にその方が戸籍上200歳になっても、法律上は存命ということになります。

 そこで、「一定の条件を満たした場合、その人は法律上死亡したことにする」、という法律があります。

 まず、特定の方が行方不明になり、7年間生死が不明の場合、裁判所に「この人は亡くなったということにして欲しい」という申立てができます。

 また、戦争や船舶の沈没など、命の危険があるような現場にいた方については、1年間生死が不明の場合、同様の手続きが可能になります。

 もっとも、これらの手続きで人が亡くなっても、それはあくまで、「法的に亡くなったことにする」というだけなので、「後になって存命であることが分かった」という場合は、裁判所に対し「法律上死亡したことを取り消して欲しい」という申し出ができます。

 また、最近では、脳死状態を人の死亡と考えるかどうかについて、色々な議論があります。

 「臓器の移植に関する法律」では、一定の条件を満たした場合、脳死状態の方から、臓器を摘出することが認められています。

 生きている人から臓器を取り出すと、殺人罪に問われかねないため、臓器移植の場面に限って言えば、脳死状態を人の死と考えていると言えるでしょう。

 

親の口座から多額のお金が払い戻されている場合の対応方法

 親が高齢になると、子が親の財産を管理するということは、珍しいことではありません。

 たとえば、お父さんが高齢になり、施設や病院に入院している間は、お父さんが自分で施設費用や医療費を支払うことは、難しいことが多いでしょう。

 そういったケースでは、お父さんが子に通帳を預け、必要な費用の支払いを託すことがあります。

 通帳を託された子が、お父さんのための生活費や医療費など、「お父さんのためにお金を使った」のであれば、何も問題ありません。

 しかし、お父さんの口座から自由にお金を払い戻せるという状況を利用し、不正にお金を使ってしまうというケースがあります。

 もし、家族の誰かが、親の口座からお金を不正に払い戻していることを知った時は、どうすればよいのでしょうか。

 まず、お父さんが認知症などになっておらず、判断能力がしっかりしている場合は、お父さんに対し事実を伝え、通帳を取り戻すことになります。

 お父さんは、自分の財産の管理権限を持っている以上、通帳を預かった子は、通帳の返還を拒むことはできません。

 ただし、お父さんが遠慮してしまい、強く言えないケースや、子が通帳の返還を拒むようなケースもあります。

 その際は、銀行に対し、「不正な払戻しをされている」旨を伝え、払い戻しができないようにしてもらうという方法があります。

 他方、もしお父さんが認知症になっていて、判断能力が乏しい場合はどうすればいいのでしょうか。

 先ほどと同じく、銀行に事情を伝え、口座を凍結してもらうという方法があります。

 しかし、口座を凍結させてしまうと、そこから施設の費用や入院費を支払うことが難しくなります。

 こういった場合には、後見制度を使うという選択があります。

 裁判所に後見人を選任してもらうことができれば、お父さんの財産の管理権限は、後見人に移ります。

 後見人が職務を開始すれば、それ以降の施設費用や入院費は、後見人がお父さんの財産から支払うことになります。

 もっとも、後見制度は、誰が後見人になるか分からない点や、財産の使い方に厳しい制限がつくなど、使い勝手が悪いという意見もあります。

 そのため、可能であれば、お父さんがお元気なうちに、生前契約を結んでおくことがお勧めです。

 たとえば、あらかじめ後見人になる人を指定できる「任意後見制度」や、特定の財産の管理権限を家族に移してしまう「家族信託」といった制度を利用すれば、認知症になった際にも慌てる必要はありません。

 ただし、どんなケースで、どの制度を利用すべきなのかは、その時の財産状況、家族構成などによって異なってくるため、どの制度を利用するかについては弁護士に相談することが大切です。

 

 

 

 

家族信託が活用される場面

 最近、雑誌などで家族信託という言葉を目にすることが増えてきました。

 家族信託は、財産に関する権限を、誰かに託す制度です。

 最も多く活用されているのは、高齢者の方の認知症対策です。

 たとえば、高齢になった親が、施設に入りたいと考えた際、ある程度まとまったお金が必要なことがあります。

 そこで、自宅を売却して、そのお金で施設に入るということが考えられますが、もし親が認知症になっている場合、不動産の売却が難しいかもしれません。

 そんな場合に備えて、自宅の売却権限をあらかじめ子に渡しておき、いざというときに自宅を売却できるようにしておくのが家族信託です。

 他にも、家族信託には、特殊詐欺の防止という効果もあります。

 たとえば、オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺は、被害者のほとんどが高齢者です。

 特殊詐欺が起きてしまう要因として、「認知能力が低下した高齢者の方がいつでも大きな金額の払い戻しができる状態」が存在することがあげられます。

 そこで、あらかじめ親が子にお金の管理権限を託しておき、必要になった分だけ、子が親にお金を渡すようにしておけば、特殊詐欺を未然に防止することも可能になります。

 このような具体例がつづくと、「家族信託は高齢者のための制度だ」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、家族信託は、必ずしも高齢者のためだけの制度とは限りません。

 たとえば、父、長男、二男の3名がいて、二男には重い障害があったとします。

 父は、自分の遺産は兄弟で平等に相続して欲しいが、二男は財産を適切に管理することが難しい可能性があります。

 こういった場合に、財産は兄弟で平等に相続しつつ、二男に相続させる財産の管理権限を、長男に渡しておくといったことが可能です。

 仮に父が4000万円のお金を持っていて、長男に2000万円を相続させ、二男にも2000万円を相続させるものの、二男の2000万円は長男が管理し、必要な時に二男のために使うという形です。

 このように、家族信託は、親が子のために用いることもある制度です。

 家族信託は、便利な制度ではありますが、税金面には注意が必要です。

 財産権を動かすと、そこに税金が発生する可能性があるためです。

 財産を託す人がだれで、財産の利益を受け取る人が誰なのかを、しっかりと制度設計段階で定めておかないと、多額の税金が課せられるおそれがあります。

 家族信託を検討する際は、相続の法律や税金に詳しい弁護士に相談をすることが大切です。

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養子縁組の方法

 血縁がなくとも、養子縁組をすれば、法律上親子になることができます。

 かつて、明治時代では、男性が家督を継ぐことになっていたので、子に恵まれなかった家庭や、男性の子が生まれなかった家庭では、養子縁組によって家督相続を行っていました。

 なかには、家同士で取り決めをして、子が生まれた際に、「別の家の子」として届け出ることもありました(「わらの上からの養子」などと言われます。)。

 今の日本では、養子縁組の種類は、養子の年齢によって、大きく2つに分けられます。

 1つは、未成年を養子にする場合です。

 未成年を養子にする場合、実の親との親子関係を消滅させる特別養子という制度もあります。

 もう1つは、成人した人を養子にするものです。

 それぞれ、制度の目的に応じて、手続きが異なります。

 たとえば、15歳未満を養子にする場合は、親権者などの承諾が必要になります。

 そのため、父母が共同で親権を持っているときは、父母両方から同意を得ないと、養子縁組をすることができません。

 さらに、原則として、家庭裁判所の許可も必要です。

 未成年の養子縁組は、子の福祉を目的としているため、新しく親になる人について、裁判所が適格性をチェックすることになります。

 他方、成人を養子にする場合は、「判断能力がある大人同士のこと」であるため、家庭裁判所の許可は不要です。

 次に、養子縁組をする際は、養子縁組届を市役所に提出することになります。

 書式のフォーマットは、各市区町村役場に備え付けられています。

 

 養子縁組が認められると、養子は法律上、実の子と同じ身分を取得します。

 その結果、相続権や扶養義務といった、親子関係の法律が適用されます。

 

 では、「仲が悪くなったので、やっぱり養子縁組をやめにしたい」という場合は、どうしたらいいのでしょうか。

 養子縁組で親子になった2人を、他人同士に戻すことを離縁といいます。

 双方の同意があれば、市役所に「離縁届」というものを出せば、養子縁組によって生まれた親子関係を消滅させることができます。

 また、片方が同意しない場合は、離縁の裁判をすることもできます。

 ただし、裁判で離縁をするためには、双方の信頼関係が破壊され、回復不能な状態といえるほどに、特別な事情が必要になります。

 また、信頼関係を積極的に破壊した側から、離縁の裁判をしても、「それは自己責任でしょ」ということで、裁判所は離縁を認めない傾向にあります。

 養子縁組は、家族構成そのものを変える行為なので、時には親族から色々口を出されてしまう等のトラブルを引き起こすこともあります。

 養子縁組のことで、気になることがある方は、弁護士に相談するとよいでしょう。

  

婚姻が無効になる場合

 婚姻することになった場合、婚姻届けを作成し、役所に提出することになります。

 役所では、提出された書面に不備がないかを形式的に審査するだけなので、婚姻が無効かどうかについては判断しません。

 つまり、提出された書面に不備がなければ、「とりあえず有効な婚姻関係が成立した」という扱いになります。

 しかし、法律では、婚姻が無効になる場合について、規定が定められています。

 その1つとして、「婚姻の意思がない」というものがあります。

 つまり、婚姻届けを出したものの、実際は「婚姻の意思がない」場合、婚姻は無効になるということです。

 では、どういった場合に、「婚姻の意思がない」ということになるのでしょうか。

 この点について、最高裁は「当事者間に真に社会通念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指す」と判示しています。

 さらに、「法律上の夫婦という身分関係を設定する意思はあったと認めうる場合であっても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎない」場合、婚姻は無効になるとも判示しています。

 この判決内容からすると、たとえば日本でのビザを取得することだけを目的に、婚姻届けを提出したような場合は、婚姻が無効になることもあり得るでしょう。

 では、長期間同棲していたカップルが、余命わずかの時に婚姻届けを提出した場合はどうでしょうか。

 たとえばAさんが余命わずかの状態で、交際相手のBさんと婚姻すれば、BさんはAさんの遺産を相続することができるようになります。

 そうなれば、Aさんの親族は、「遺産目当ての婚姻だ」などと主張し、弁護士に裁判の依頼をすることが予想されます。

 もし、最高裁が述べる「真に社会通念上夫婦であると認められる関係」というものが、『婚姻届けを出した後も、夫婦として共同生活を送ること』を指していると考えると、まもなく死別してしまう2人には、婚姻の意思がないと評価する余地が出てきます。

 しかし、この点がまさに争点になった裁判では、婚姻が有効なものであると判断しました。

 つまり、最高裁は、婚姻届けを出した後も、ずっと一緒に暮らしていくことまでは必要ないと考えていると言えるでしょう。

 

弁護士と委任契約

 たとえば、遺産の分け方で相続人同士がもめてしまい、収拾がつかなくなった場合、弁護士に交渉を依頼するということがあるかもしれません。

 もし、弁護士に遺産の分け方を依頼することになった場合は、弁護士と契約を結ぶことになります。

 この弁護士との契約は、民法では委任契約と呼ばれています。

   

 今回は、委任契約というものについて、ご説明したいと思います。

1 他の契約と比較した場合の委任契約の特徴

 委任契約は、何らかのお仕事を任せることを内容とします。

 何らかのお仕事を依頼するという意味では、たとえば会社が従業員を雇って、お仕事を任せるという場合がありますが、これは委任契約とは言いません。

 会社が従業員を雇う場合は、雇用契約です。

 雇用契約では、基本的に従業員は会社の業務命令に従わなければなりません。

 しかし、委任契約は、そのような指揮・命令関係はありません。

 また、何らかのお仕事を任せるという意味では、大工さんに家を建ててもらうという契約もありますが、これも委任契約とは言いません。

 この契約は、あくまで「家の完成」を目的としているため、大工さんは家を完成させない限り、原則として報酬を受け取ることができません。

 このような契約類型を請負契約と言います。

 他方、委任契約は、何らかの仕事を完成させなくても、報酬を得ることができます。

 たとえば、弁護士が裁判をして負けたとしても、裁判を行ったことへの報酬はお支払いいただくことになります。

   

2 医師の診察や手術も委任契約

 病院で診察を受けたり、手術を受ける場合も、委任契約の一種と考えられています。

 たとえば、患者は医師に対して、指揮・命令権は持っていませんし、仮に治療の甲斐なく亡くなってしまっても、医療費は支払わなければなりません。

 そういった意味で、医師と患者の契約関係は、雇用契約でも、請負契約とも言えません。

3 委任契約は原則として無料?

 法律では、委任契約によって、報酬を請求する場合、その旨の特約を結んでおく必要があるとされています。

 そのため、委任契約は原則として無報酬というのが、法律の建前と言えます。

 もっとも、「普通、このサービスが無料なわけないでしょう」というものについては、特約がなくても有料になることがあります。

 たとえば、弁護士や医師に依頼した場合に、無料でサービスを受けることができるかと言うと、それは社会通念上難しいということになります。

 もっとも、実際の場面では、委任契約を結ぶ際は、契約書に署名・押印することが多いため、委任契約が無料という場面は少ないと思います。

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相続と不動産鑑定

 相続分野を扱っていると、「遺産の不動産をどうするか」、という問題に直面することが多々あります。

 特に、不動産を何円の財産と評価するのかで、相続人同士がヒートアップすることも少なくありません。

 それでは、不動産の値段は、どうやって決まるのでしょうか。

 実は、不動産について、「これで絶対値段が決まる」という算定方法があるわけではありません。

 全く同じ不動産、というものは存在しないため、個々の不動産の個性に注目しながら、不動産の評価額を決めていくことになります。

ただ、弁護士であっても、不動産の評価に詳しいとは限らないため、不動産会社や不動産鑑定士に評価の決め方を委ねてしまう場合もあるかもしれません。

 しかし、たとえば相手方の弁護士が出してきた不動産の査定書や鑑定書が、妥当なものなのかどうかは、弁護士が責任を持って判断しなければなりません。

 私も、日々不動産の評価方法は研究していますので、今日は不動産の評価の方法について、簡単にご説明します。

1 不動産評価の方法

 不動産の評価の方法は、大きく分けて3種類あります。

 1つは、原価方式という方法で、「その不動産を再調達しようと思ったとき、どれくらい費用が必要か」とい   う点に着目した方法です。

 2つ目は、比較方式という方法で、周辺の不動産取引の相場から、不動産の価格を決めていく方法です。

 3つ目は、収益方式という方法で、不動産が生み出す利益に注目して、不動産の価格を決める方法です。

2 どの方法が適切なのか

 理論的には、どれも正しいですが、それぞれに適した場面、適していない場面というものがあります。

 そのため、実際の不動産鑑定の際は、3つの手法を掛け合わせて、不動産の鑑定を行います。

 たとえば、一軒家を所有し、誰かに貸し出している場合は、その一軒家は収益を生んでいるので、収益方式で鑑定しやすい物件と言えます。

 他方、その物件の賃料が、何世代も前から変わっていなくて、相場より異常に安い場合は、収益方式のみだと、適正な評価額が出ないこともあります。

3 不動産会社が用いる方法

 不動産会社で、不動産の売買価格の査定を行う場合があります。

 通常、不動産会社は、比較方式を採用し、周辺の同じような条件の物件が、どれくらいの価格で売れたのかということを重視して、査定を行います。

 もっとも、不動産会社の査定システムは、不動産鑑定士が行う鑑定とは異なり、そこそこアバウトな面もあります。

 そのため、不動産会社が作成した査定書については、その数字が正しいのか、慎重な検討が必要です。

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相続で問題になりやすい不動産

 一般的に、収益を生み出しているような不動産であれば、不動産としての価値は高いかもしれません。

 しかし、いざ相続の場面になれば、そのような価値の高い不動産を巡って、争いが起きやすくなります。

 また、田んぼ、畑、山林など、売却が難しく、誰も欲しがらないような不動産については、押し付け合いがおきやすくなります。

 もし、遺産の中に、相続で問題になりやすい不動産がある場合は、不動産の分け方について、弁護士の見解を聞いてみることも大切です。