小規模個人再生と給与所得者等再生

 債務整理を検討したことがある方は、小規模個人再生と、給与所得者等再生という言葉を、聞いたことがあるかもしれません。

 小規模個人再生は、債務を減額した上で、分割払いをしていく制度ですが、給与所得者等再生は、その督促という位置づけになっています。

 小規模個人再生と、給与所得者等再生では、大きく分けて、3つの違いがあります。

 1つ目の違いは、給与所得者等再生では、収入状況について、特別な条件が付いている点です。

 法律上は、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる」ことが必要です(民事再生法239条1項)。

 2つ目の違いは、最低弁済額の計算方法です。

 小規模個人再生では、債権額によって、おおよそ100万円から500万円の返済が必要になるのに対し、給与所得者等再生では、生活保護基準に従って計算した可処分所得の2年分以上の返済が必要という条件がつきます。

 3つ目の違いは、小規模個人再生は、債権者の書面決議が必要ですが、給与所得者等再生では、書面決議が不要とされています。

 では、どのようなケースで、給与所得者等再生の向き・不向きが分かるでしょうか。

 まず、独身の方は、給与所得者等再生は、不向きなことが多いと言えます。

 その理由は、独身の方は、扶養家族がいないため、生活保護基準によれば、可処分所得が多くなり、最低弁済額が高めになってしまうためです。

 次に、過去2年間の間で、収入状況に大きな変動がない方は、給与者所得等再生に向いています。

 たとえば、公務員や会社員など、安定的に給与所得がある方は、給与者所得等再生を行いやすいと言えるでしょう。

 では、個人事業主のように、毎月の収入状況が安定しないこともある方は、給与者所得等再生はできないのかというと、そういうわけではありません。

 たとえば、個人事業主の方であっても、特定の建設業者から、安定的に下請けを受けることができている場合、給与者等所得再生が可能な場合があります。

 さらに、何らかの理由で、債権者が小規模個人再生に反対してくることが予想される場合は、積極的に給与者所得者等を検討すべきでしょう。

 なぜなら、給与所得者等再生では、書面決議が不要になるからです。

 以上のように、小規模個人再生を選択するか、給与所得者等再生を選択するかは、諸事情を総合的に検討した上で、判断しなければなりません。

 かなり専門的なノウハウが求められるため、債務整理を検討している方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。