「相続人が誰か」ということを質問されたとき、最初に誰を思い浮かべるでしょうか。
「配偶者だ」と答える方がいれば、「子どもだ」と答える方もいると思います。
実は、法律的には、相続人は大きく2種類あると言われています。
まず1つ目は、血族相続人と呼ばれているものです。
血族、という言葉からイメージできるとおり、血がつながった家族が、相続人になるのが原則ということになります(もちろん、養子縁組をすれば、血のつながりはなくとも相続人になることができます。)。
ただし、血がつながっていれば、誰でも相続人になれるわけではありません。
相続人には、優先順位が定められており、最優先の相続権を持つのは、子どもです。
たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんに長男と二男がいる場合、長男と二男は、最優先の権利を持つ相続人です(仮に二男が先に亡くなっていて、二男に子がいる場合、その子が相続権を持ちます)。
では、Aさんに子どもがいなかった場合は、どうなるでしょうか。
この場合、第2順位の相続権を持つ、Aさんの親が相続人になります(親がいない場合は、祖父母など、さらに上の世代が、相続権を持ちます)。
さらに、Aさんの親もいないような場合は、第3順位の相続人である、Aさんの兄弟姉妹が相続権を持ちます(兄弟姉妹が亡くなっていて、その子がいる場合は、その子が相続権を持ちます。)。
血族相続人は、この第3順位までの人だけが含まれており、それ以上遠縁の親族は、相続人ではありません。
2つ目の相続人として、配偶者相続人があります。
配偶者は、血族ではなく、養子縁組もしていませんが、最優先の相続権を持ちます。
では、いわゆる事実婚関係の場合、相続権はどうなるでしょうか。
たとえば、XさんとYさんが、何十年も夫婦同然の生活をしていたものの、婚姻届けは出していなかったという状態で、Xさんが亡くなった場合を考えてみます。
現在の日本の法律では、事実婚関係では、相続権を認めていないため、Yさんは、相続権がありません。
そのため、Yさんに財産を残しておきたいなら、Xさんは遺言書を作成しておく必要があります。
もっとも、遺言書が必要なのは、こういった事実婚関係の場合だけではありません。
たとえば、子どもがいない夫婦のうち、夫が亡くなると、相続人は、妻と、夫の親(または夫の兄弟姉妹・甥姪)ということになり、遺言書が無いと、妻は、夫側の親族と、遺産の分け方を協議しなければなりません。
また、子どもがいる夫婦であっても、遺産の分け方をめぐって、もめてしまう例は数多くあります。
そのため、遺言書が必要かどうか、一度弁護士に相談することが大切です。