たとえば,寝たきりになって意識がない人や,重度の認知症になった人は,悪い人に騙されて財産をとられてしまう可能性があります。
また,そういった症状の人は,設備が整った施設で,手厚い保護が必要になります。
後見人はそういった人を全面的にサポートする責務を負うため,それに見合った広い権限を与えられます。
具体的には,サポートを受ける人(被後見人)の財産について包括的な代理権を持ちます。
たとえば,病院や施設に利用料を支払ったりするために預金を払い戻したり,場合によっては家を売却することも可能です。
ただ,もちろんこれらの行為はサポートが必要な被後見人のために行うのであって,お世話をする立場にある後見人が私利私欲のために権限を行使することは許されません。
広い権限が認められている後見人ですが,被後見人の代わりに行うことができない行為もあります。
たとえば,婚姻,離婚,養子縁組など,家族関係に関わる行為は,本人の意思でのみ行うべきとされているので,後見人が代わりに行うことはできません。
また,遺言書の作成についても,本人の意思でのみ行うべき行為であるため,後見人が代わりに遺言書を作成することはできません。
後見人として行う義務がある行為と,行ってはならない行為というものがあり,これらを知らずに後見人の職務をこなすことは非常に危険です。
成年後見制度の利用を検討されている方は,後見制度を利用した場合に発生する義務や権利について,事前に弁護士から説明を受けることをお勧めします。