子や配偶者等の一定の親族は,相続人になることができます。
しかし,特別な事情がある場合には,子や配偶者であっても相続権を失うケースが法律で定められています(これを相続欠格といいます)。
たとえば,父親が亡くなり,母親と長男と次男が相続人というケースを考えてみます。
もし,長男が父親をナイフで刺したために,父親が亡くなったという場合はどうなるでしょうか。
このような場合に,長男が父親の遺産を相続すことを認めることは,殺人者に利益を与えることになり,不当だということは明らかです。
そこで,こういったケースでは,長男は相続権を失ってしまいます。
もっとも,注意すべき点は「故意に殺した」こと,つまり殺人罪が適用されるケースに限られるという点です。
そのため,たとえば長男が部屋で木刀を素振りしていた時に,うっかり同じ部屋にいた父親に木刀をあてて死なせてしまったようなケース(過失犯)の場合,相続欠格にはなりません。
同様に,父親を殺すつもりはなく,怪我をさせるつもりだったような場合(傷害致死)についても,相続欠格とはなりません。
また,相続人が他の相続人を殺した場合も,相続欠格にあたります。
たとえば,相続人が長男と次男だけの場合,次男がいなくなれば長男は全ての遺産を独り占めできます。
しかし,遺産を独り占めする目的で次男を殺した長男に,遺産を与えるようなことは許すべきではないため,この場合も相続欠格にあたります。
殺人によって,相続欠格に該当するケースは珍しいですが,他にも身近な相続欠格事由はあります(たとえば遺言書を偽造したり,隠したりする行為)。
遺産を渡したくない人がいる場合,その人が相続欠格に該当すれば,遺産を渡さずに済むことになります。
相続欠格について興味を持たれた方は,一度弁護士にご相談ください。