刑事事件での立証は、証拠によってなされます。
そのため、検察官は、冒頭陳述の後に、犯罪事実などを立証するために、証拠の取り調べ請求を行います。
つまり、検察官が、裁判官に対し「見てほしい証拠」を提示するわけです。
しかし、いきなり裁判官に証拠を提示するわけではなく、まずは弁護士人に証拠が開示され、弁護人は、その証拠に対して、意見を述べることになります。
弁護人が述べる意見には、同意、不同意、異議あり、異議なし、しかるべくといったものがあります。
たとえば、傷害事件で、犯行現場を目撃したAさんが、警察で、目撃したことを語り、それを書面化したものが証拠請求されるとどうでしょうか。
警察が、被告人を有罪にするために、Aさんから聞いた言葉を、若干ニュアンスを変えて記載している可能性もありますし、弁護人としては、Aさんが、間違いなくその現場で、被告人の犯行を目撃したのか、人違いの可能性はないのか、暗くてよく見えなかったのではないかなどなど、法廷で聞きたいことはたくさんあります。
そのため、こういった書面が証拠請求をされても、弁護人は、不同意という意見を出し、Aさんには法廷で見たことを語っていただくという形を取るのが一般的です。
また、たとえば詐欺事件において、被告人の高校の同級生のBさんが、「被告人は、高校時代、クラスメイトに暴力をふるっていた」という証言をするために、検察官が、Bさんを証人として申請した場合はどうでしょうか。
この場合、弁護人としては、異議ありと述べることになります。
仮にBさんを法廷に呼び、被告人が高校自体に、クラスメイトに暴力をふるっていたとしても、今回の詐欺事件とは、何ら関連性がありません。
つまり、検察官が狙っているであろうことは、裁判官に対し、被告人が、いかに悪人かをアピールすることで、印象を悪くしようとしている点にあると予想されます。
よって、Bさんは、詐欺事件とは何ら関係ない人なので、法廷に呼ぶべきではないということになります。
このような弁護人の意見を参考に、裁判所は、証拠を取り調べるかどうかを判断します。
刑事裁判は、証拠によって結論が分かれてしまうため、弁護人は、証拠に対する意見を述べる際、その内容を慎重に吟味しなければなりません。
特に、犯罪事実を争っている事件であれば、なおさら証拠に対する意見は、慎重さが求められます。
私が所属する弁護士法人心では、刑事事件にも力を入れていますので、お困りの方は、お気軽にご相談ください。