たとえば、おばあさん、お父さん、お母さん、長男という4人家族の場合の相続を考えてみましょう。
仮に、お父さんが亡くなれば、相続人はお母さんと長男です(おばあさんは相続人ではありません)。
お母さんと長男は、それぞれお父さんの遺産の2分の1を取得する権利を持ちます。
では、仮にお父さんと長男が自動車に乗っていて、交通事故に遭った場合、どのような相続が起きるでしょうか。
まず、お父さんが先に亡くなり、その数分後に長男が亡くなった場合を考えます。
お父さんが亡くなったことで、お母さんと長男が、いったん相続人として遺産の権利を取得します。
その数分後、長男が亡くなったことで、長男の相続人であるお母さんが、長男の遺産を全て取得することになります。
他方、もし先に長男が亡くなって、その数分後にお父さんが亡くなった場合はどうなるでしょうか。
この場合、長男の相続人であるお父さんとお母さんが、長男の遺産を半分ずつ相続することになります。
その数分後、お父さんが亡くなると、お父さんにとっての相続人は、お母さんとおばあさんなので、お母さんがお父さんの遺産の3分の2を取得し、おばあさんはお父さんの遺産の3分の1を取得します。
では、お父さんと長男が、同時に亡くなった場合はどうなるでしょうか。
日本の法律では、「生きている人だけが、相続人になることができる」という決まりになっています。
そのため、お父さんが亡くなった際、長男はすでに存在しない人という扱いになり、お父さんにとっての相続人はお母さんとおばあさんということになります。
次に、お父さんと長男がかなり近い時間で亡くなったものの、どちらが先に亡くなったのかははっきりしない、という場合はどうでしょうか。
このようなケースで、ご遺体の解剖などをして、どちらが先に亡くなったのかを1秒単位ではっきりさせる、などということは非現実的です。
そこで、こいったケースでは、「同時に亡くなった」とみなすことになります。
最後に、お父さんと長男が同時に亡くなり、長男には子がいた、というケースだとどうでしょうか。
この場合は、長男については、長男の子が唯一の相続人なので、長男の子が長男の遺産を取得します。
他方、お父さんにとっての相続人は、おかあさんと、孫である長男の子ということになります。
このように、誰が誰の遺産を相続するかという点は、家族構成や、亡くなった順番などで大きく変わります。
複雑な事情がある場合、どのように相続手続を進めるべきかは、一度弁護士に相談することをお勧めします。